6 07, 2007
Proud of Sanjo kaji
3年前、鍛冶職人を目指した若者が当社の門を叩いた。彼は高校を卒業後、家業の鍛冶を継ぐことを決心したのだ。三条の町を訪れたのは鍛冶修行のため。私の子供といくらも年の変わらない彼は一人で知り合いもいない、環境の違う町で新しい生活をスタートさせた。
最初の頃は慣れない仕事に涙した日もあった。しかし彼は持ち前の明るさと頑張りで気が付いたら会社の一員となり職人の社会に入り込んでいった。そんな彼の修行も残すところ10日あまりとなった。今振り返って彼に三条鍛冶の伝統をいくらかでも手渡すことができただろうか?
「職人に世界は寡黙な世界。仕事は教えてもらうんで無くて、見て覚えろ。」今も昔も変わらない職人気質。彼が来る前から社員のみんなには「職人として、人生の先輩として鍛冶を志す若者に、皆さんの持っているものを手渡して欲しい。」と言い続けてきた。
「守り受け継がれてきた三条鍛冶の伝統も、職人の技も、ともすると今の社会の変化の中では舵の無い船のようなもの。いつ高波に飲み込まれてしまうか分からない世の中になってしまった。職人の意地だけでは仕事としての鍛冶屋は残っていけないのかもしれない。」3年間の修行で成長した彼の姿を見て、あらためて自分達の置かれている現実を感じている。
修行の残りの日々を彼と職人達には今まで以上に大事にしてもらいたい。彼に伝えることはまだまだあるはずだから。まもなく三条を離れ彼は実家へと帰っていく。彼の本当の生活がこれから始まるのだ。実家での鍛冶仕事で初めてともす心の火は、三条の職人たちから持ち帰ってもらいたいと願っている。
「燭の火を燭にともすや春の夕」 (蕪村)
投稿者 godos : 2007年06月07日 17:22
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