5 31, 2011
「製品安全対策優良企業表彰」を受賞して
【平成23年5月17日 三条北ロータリークラブ例会卓話より】
三条市田島で鍛冶を生業としております相田と申します。本日は例会の貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。弊社が先日いただいた「製品安全対策優良企業表彰」のご説明と受賞後の弊社が今どうなっているかをお話させていただきます。燕三条青年会議所の出身でありますが、10年ほどこのような会から遠のいておりますので緊張しております。話がスムーズでないことがありますがご容赦をお願いいたします。
三条の伝統的な鍛冶屋です。昨年創業80年を迎えました。その殆どの時間の中で三条の金物卸の皆様のお力をお借りして、全国に商品を供給させていただいておりました。平成に入り世の中が大きく動き出し、当地にも刃物の取扱業者の不景気が参りました。バブルの頃を思い出しますと、世の中は商売が楽というか何でも売れる状況だったと思います。実はその頃、バブルの最盛期に不景気がやってきました。なんで不景気になったのかを検証したとき、思い当たるのは「鍬」は取り扱うのに難しい商品だということでした。当時の景気の良さに、要らぬ労力をかけるなら、売れるものを売れといった風潮においていかれた商品だったのかもしれません。
「村のかじや」という唱歌がありますが、まさに「しばしも休まず」というようなものづくりをしています。鍬鍛冶の実態は歌のとおりです。三条でも川を渡り燕に入ると鍬の形が変わるように、全国に数千といった種類があります。私どもだけでも4000品の製造実績があります。戦後まもなくの統計で全国に9800軒ほどの野鍛冶がありました。北海道から九州、沖縄まで9800人の鍛冶屋がいて、9800通りの鍬があったことになります。「村のかじや」はその土地土地にあった鍬を供給していたわけです。
流通も変わりホームセンターの登場がある中、専門性だけを求められる商品は動きにくくなりました。このままでは売上の減少に歯止めが掛からなくなる危機感から、平成10年ごろからホームセンターに商品を供給し始めました。平成13年頃には売上の半分くらいがホームセンター流通となりました。ところがそのころから私どもが想定していなかった起き始めました。クレームの発生です。このあたりの鍬は畦塗りもできる鍬ですが、関東では形も用途も使い方も変わります。また、こちらできつくクサビを打ち込んだ鍬でも、山を越えて関東に行き、空調の効いている店頭に並んだら乾燥でクサビが抜け落ちる。市内の卸問屋さんに納めていたときは、刃部だけを製品として納めていたのでこのようなクレームは殆どありませんでした。
クレームの解決策はなかなか見出せませんでした。担当のバイヤーと相談したりしましたがうまくいきません。そんな時、会社の損害保険をお願いしている友人から「使い方をもっときちんと伝えたらいいんじゃないか」「木が痩せるのは当たり前だから、クサビを打つとか、水につけてもらうとかすれば」とアドバイスをいただきました。ではどうすれば良いのか、社内で検討いたしましたが弊社の社員は職人です。機械に向かう、火に向かうは得意ですが、お客さんが何を求めていえるのか、どこで何が起きているのかを考え製品に具現化することはなかなかできかねました。
そこで、先ほどご紹介をいただきました渋谷社長さんの三条印刷の社員さんに、シールや何かで鍬に表記できないか相談を持ちかけました。今日は鋏を持ってきました。この商品は小林会長さんの会社で作っている鋏です。これを鋏だけで分けてもらい、弊社で台紙を付けて販売しています。最初は売り場で目立つパッケージで考えていましたが、事故なく正しい使い方で使っていただけるかと考えたときに台紙のデザインを変えることにしました。この際にも三条印刷さんからお知恵をお借りして作っていただきました。今日は、鍬を持ってくるには無理がありましたので持ってきませんでしたが、鋏の事例のようなことを行っています。
実はここに至るまでに頭の中を大きく変えなければいけませんでした。私たち鍛冶屋は切れるもの、安全に安心して使っていただくことを大前提にものづくりをしています。しかし、使うことはお客様の部分、私たちが言うことではないとずっと思っていました。良い物さえ作ってお渡しすれば後はお客様の部分というように考え方が固執していました。しかし、製品安全の取り組みの中で、「この商品が何か」ということをきちんと伝えないと、「正しく、安全に使う」事が導き出せないということに気が付いたのです。
「タケノコを掘る鍬」というオーダーがあった時に、先ほどの畦を塗るような鍬をお使いになると、刃が折れたり柄が折れたりして、場合によってはケガにつながります。「タケノコを掘る専用の鍬がありますよ。重量があるので持ち運びには注意してください。刃が鋭利なので注意してください。」などということは説明しなくても当たり前に伝わっていたと思い込んでいました。しかしそうではなくて、私たちが持っている情報を商品にくっつけてあげることで、「正しく、安全に使っていただく」事が成立するのだということがわかりました。
流通が変わっていしまってことで情報が届かなくなってしまった。問屋さんに納めて、問屋さんがお店に説明して納めて、お店で接客して説明してお客さんに販売することが途切れてしまっている。ホームセンターやショッピングセンターがセルフ販売形態になってしまい、製品に対しての情報が人伝えにいくことがなくなってしまった。このような状況の中、弊社では今までただペタペタ貼っていた商品ラベルを見直し、目的を持たせ情報を載せました。このような作業を取扱の商品全般に広げていったのです。
私にアドバイスをくれた保険屋の友人が、平成19年から経済産業省が「製品安全対策優良企業表彰」をやっているから、自社の進捗状況や全国とレベルと比べてどうなのかを計るためにエントリーしたらと教えてくれました。弊社は職人の集まりの会社なので、「社長がやれというから何となくやっている」という雰囲気が漂っていました。もしも賞が取れたら皆が喜んでくれるのではないかという一念で、エントリーシートしました。
エントリーシートには4つの項目があります。
①安全な製品を製造するための取り組み
②製品を安全に使用してもらうための取り組み
③出荷後に安全上の問題が判明した時の取り組み
④製品安全文化構築のための取り組み
これらの項目に、今までやってきたことをそれぞれ記入し第4回にエントリーしました。結果、私たちが一番驚いていますが、中小企業 製造事業者・輸入事業者部門の経済産業大臣賞をいただくに至りました。しかし、振り返るとやってきたことは特別のことをやってきたわけでなく、常日頃やっていたことを第三者から見てもらい、自分たちの気づかないことを教えてもらい、変えて行っただけです。
三条は「ものづくり」のまちです。三条には名だたる大企業の製造事業者も多くあります。「まちを挙げて」は語弊があるかもしれませんが「製品安全の取り組み」を通じて三条の商品の優位性を訴えてることができます。「三条の商品は正しく使ってもらえば、すごい機能性を発揮する良い道具」ですと、流通の皆様にはもっと情報を発信していただきたいと考えています。「製品安全の取り組み」を新たな軸とした製販の連携をし、三条が良かった頃を今に再現できないか。三条の製造、流通業がもう一度世の中に出て行くきっかけになればと思い、貴重なお時間をいただき私どものやってきたことをご紹介させていただきました。
「製品安全対策優良企業表彰」の審査委員長でもあり省庁に製品安全をアドバイスされている、明治大学の向殿先生をはじめとされる審査員の皆様からいろいろとお言葉を頂戴しました。その中で私が感銘を受け、今後も取り組んでやっていこう思えた言葉をご紹介いたします。
「製品安全を切り口とした地場産業振興のモデルケース」「業界を越えた他業界、自治体等と連携を図って、この取り組みのを是非発信してください。これが伝統産業復活の活性ツールになるかも知れません。」
この言葉本当に心強く思いました。地元にいると鍛冶の業界は不景気を脱する感じではないのですが、今後の取り組みに強く背中を押していただけたようです。
拙い話で恐縮ですが以上とさせていただきます。ありがとうございました。
投稿者 godos : 17:23